アマチュア無線の楽しみの一つに、旅先にＶＨＦ帯のポータブルの無線機を持って行って現地の人とお話が出来ることがあげられます。私が、アマチュア無線を始めた福島市には近くに「飯坂温泉」と「高湯温泉」があり、遠くから旅行に来ている人がＣＱを出していればよく交信していました。

ある時、九州から旅行に来ている女性と交信する機会がありました。その時は交信後、カードの交換を行いました。１年後、ＨＦ帯で聞き覚えのある声を耳にしました。ＱＳＬカードで確認したら、間違いなく高湯温泉に来た時に交信した女性です。
全国から多くの呼びかけがありましたが、私が声をかけると幸いにも交信する事が出来ました。

遠方から来て交信した人と、再びＨＦ帯で出会ったのはこの時が始めてで、二人とも偶然の再会を喜び、今度はＨＦ帯でのカード交換を行いました。

現在は、携帯電話の普及の陰でアマチュア無線の免許を取る人が激減しているとのことですが、アマチュア無線にはこのような触れ合いの場が残っています。

福島でアマチュア無線を始めた時は無線をしている人に知り合いは１人もいませんでしたが、毎日交信しているうちに、空での知り合いが次第に多くなりました。そのうち、いつも交信している人たちから花見に誘われました。

会場は福島の花見山公園でした。始めて行く場所で池の前に「アマチュア無線観桜会」という張り紙があり、矢印の方向にハムの花見に参加すると思われる人達がたくさん座っていました。その日の参加者にはいつも声で親しくしていても、顔を合わせた人は一人もいませんでした。

座っている人達を見渡して、Ａさん夫婦は二人で参加すると言っていたから声の感じから判断してあの二人、あの声はＢさん、そしてあの一番前で一人一人挨拶しているのが、今日の幹事のＣさん、と声と顔を見比べては一人で勝手に想像していました。女の人と子供がちょっと多すぎるなとちょっと疑問に思いましたが、最近は女性のハムも多くなったし、また家族同伴でと言っていたので多いのかもしれないと思ったりしていました。

やがて始まる時間となり、一番奥の席に座りました。始まりの時間もちょうど約束の時間でした。司会者が「それでは社長どうぞ」と言ったので、あれ？、幹事のＣさんはどっかの社長だったのかなと思いましたが、「本日は○○会社の家族招待観桜会に参加していただきまして．．．．」と挨拶が始まりました。
そんなはずは無い。ここはハムの花見のはずだと思って隣の女の人に確認したら、やはり○○会社の花見の席だということでした。

何故間違ったんだろう。早く席を立たなければと思いましたが一番奥に座ったし、挨拶が続いてシーンとしているので立つにも立てない状態でした。ようやく乾杯が始まり、どさくさにまぎれて抜け出すことが出来ました。もう一度張り紙を良く見たら、左手の建物を指しているようにも見えたので、そちらの方に行ってみるとなるほど、こちらはハムらしい人達が沢山集まっていました。

「ＪＨ７ＢＩＡ」です。遅れまして．．．．．」と今来たような顔ですまして入って行きました。黙っていようと思ったのですが、自己紹介の中で先程の失敗談をお話したら、全員爆笑で翌日からしばらくの間、空の話題にされました。

最初はこんな失敗もありましたが、無線を始めた福島では沢山の友達が出来、福島を出るときは「福島の空が静かになる」という感謝状を貰ってきました。